正直に言います。タイに行く前までは、「昆虫を食べるなんて、無理に決まってるでしょ…」と本気で思っていました。

日本では、イナゴの佃煮くらいしか馴染みがないし、スーパーの総菜コーナーに虫が並ぶなんて絶対にあり得ませんよね。見た目もインパクト強すぎるし、口に入れるなんて想像もできなかったんです。

でも――。

タイを旅しているうちに、そんな私の常識が少しずつ揺らいでいきました。市場や屋台では、まるでポテトチップスみたいに昆虫が並び、地元の人が普通にパクパク食べている光景が日常の一部として存在していたんです。

「え…本当にこれ、食べてるの?」
「美味しいの?安全なの?…いや、そもそも虫だよ?」

そんな葛藤と疑問がぐるぐるする中、私の背中を押したのは、やっぱり“好奇心”でした。

勇気を出してひとくち食べてみたら――世界が変わった。

今回は、そんな私がタイで実際に体験した「昆虫料理」を5つ、そして唯一どうしても無理だった“あの虫”についても、包み隠さずご紹介します。

昆虫食に興味がある人も、「いや無理でしょ…」と感じている人も、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。


小エビみたいで美味しい!「メガチョーン」

初めての挑戦は、イサーン地方で出会った「メガチョーン」。タイ語で“小さな虫”という意味らしく、見た目は小型のバッタのようでした。

屋台の鉄板でガーリックとスパイスと一緒に炒められていて、香ばしい匂いがふわっと鼻をくすぐり、「これ…ちょっと美味しそうかも?」と思わず足が止まりました。

「これは何ですか?」と尋ねると、にこやかなおばちゃんが「メガチョーンだよ、エビみたいで美味しいよ」と。

勇気を出してひとくち。

……ん?これ、エビ!? ナッツ!? 意外とイケる!!

カリッと香ばしくて、まったく臭みがない。というかむしろ「おつまみとして売ってほしいレベル」でした。

周囲のタイ人たちも、まるでポテチのように袋からつまんでポリポリ。ああ、こうやって“食文化”って根付いていくんだなあと、妙に感心したのを覚えています。


ハチの幼虫「カイプン」は白子みたいな濃厚さ!

次に出会ったのは、少しハードルの高そうな「カイプン(ハチの幼虫)」。

市場で手のひらサイズの巣にびっしり詰まった白い幼虫たちを見たときは…正直、ちょっと引きました。でも、地元の人いわく「これは栄養満点で、子どものおやつにもなる人気食材だよ」とのこと。

生でも食べられるそうですが、私は安全策を取って炭火焼きにチャレンジ。

食べてみると、外側はこんがり、中はとろ〜っとしていて、白子やアン肝のような濃厚でクリーミーな味わい!クセもなく、むしろ「これ昆虫だったっけ?」と疑うほど。

バナナの葉で包んで焼いたバージョンは香ばしさがアップしていて、ビールにぴったり。日本円で500円〜600円と少し高めですが、納得の美味しさと栄養価でした。


昆虫食の登竜門「チンリッド(コオロギ)」

最初に挑戦した昆虫料理は、実は「コオロギ」でした。タイ語では「チンリッド」と言います。

夜の屋台で見かけ、「1匹だけなら…」と恐る恐る注文。ガーリックと塩のシンプルな味付けで、サクッとひと口。

……うまい!サクサクでナッツのような味わい。しかも見た目ほどグロくない!

最初は1匹だけのつもりが、気づけば1袋完食。そしてもう1袋おかわり…(笑)

最近では「コオロギパウダー」として粉末に加工され、プロテインバーやパスタにも使われていて、栄養面・環境面からも注目の“未来食材”なんだとか。タイの市場で出会った時はそんな未来の話なんて知らなかったけど、今なら納得です。


軽くて香ばしい「タカテーン(バッタ)」

次にチャレンジしたのは「タカテーン」、つまりバッタです。

メガチョーンより少し大きめで、一瞬ひるみましたが、屋台ではしっかりと下処理されていて、羽や足はきれいに取り除かれていました。

素揚げされていて、食感はサクサク、パリパリ。塩とガーリックの王道コンビが最高で、もはやスナック菓子の域。

屋台のおじさんが「カルシウムたっぷりで子どもにも人気だよ」と話してくれて、なるほど、殻がしっかりしている分、栄養価も高い。

お値段も手頃で、旅行中のヘルシーなおやつにぴったりでした。


私が一番ハマった「カイ・モッ・デーン(赤アリの卵)」

そして最後に、私が一番感動したのが「カイ・モッ・デーン」、つまり赤アリの卵。

「アリの卵…それはさすがに無理じゃ?」と思っていたんですが、これがまさかの美味しさ。

市場で購入したぷっくりした白い卵を、卵焼きにして調理。オイスターソースとナンプラーで軽く味付けして、最後にアリの卵を加えてさっと火を通します。

ひと口目から衝撃。

ぷちぷちとした食感と、ウニのような濃厚なコク。ほんのりとした甘さと酸味、苦味が絶妙なバランスで広がって、クセになる味わいでした。

毎年2〜5月の限られた季節にしか出回らない貴重な食材で、地元では予約必須の人気商品なんだとか。納得の“自然の高級グルメ”です。


どうしても無理だった…「メンダー(タガメ)」

そんな中、唯一どうしても食べられなかったのが「メンダー」、タガメです。

市場で見たその姿は、巨大なGのようで…体長5〜7センチの堂々たる体格。私の虫耐性が試されました。

屋台のおばちゃんは「食べてみる?」と笑顔で勧めてくれましたが、私は苦笑いでごまかすので精一杯。

実はこのタガメ、お腹の部分を吸うようにして食べるそうで、なんと「洋ナシのようなフルーティな香り」がするとのこと。実際に嗅がせてもらうと、本当に爽やかな香りがして驚きました。

しかも「ナムプリック・メンダー」というタガメを使った高級ディップにも使われているというから、タイ文化は奥が深い…。

でも、どうしても食べる勇気は出ませんでした。これが唯一の“撤退”です。

謎のお土産、開けてびっくり…瓶詰の「ロッドゥアン」

タイ人の友人から「日本の友達もきっと喜ぶよ!」と渡された紙袋。
「ノーマイ(タケノコ)」という言葉だけを頼りに、「おそらく加工されたタケノコか何かだろう」と思って日本に持ち帰りました。

ところが、家で封を開けた瞬間、思わず声が出ました。

中にはびっしりと詰まった“イモムシ”たち…。

まさかの瓶詰ロッドゥアン(竹の中に住む幼虫)!
その見た目のインパクトたるや、想像以上で、私でもギョッとしました(笑)。

でも後から聞くと、ロッドゥアンはタイでは高級食材で、栄養価も高くて、瓶詰一つが2,000円以上することもあるとか。
たんぱく質も豊富で、健康志向の人たちからも注目されているそうです。

ただし…お土産にするなら相手を慎重に選ぶべし。虫嫌いな人に渡すと、友情にヒビが入るかもしれません(笑)。


揚げたて「トワマイ」はナッツみたいでおいしい!

次に挑戦したのが、「トワマイ」と呼ばれる蚕のさなぎ。
市場の屋台で売られていた揚げたてのものにチャレンジしてみました。

見た目は…なかなかパンチあります。茶色くてぷっくりしていて、表面がツヤツヤ。
でも、食べてみると意外や意外!外はカリッと香ばしく、中はクリーミー。ほんのりナッツのような風味があり、クセになる味わいなんです。

塩とニンニクで味付けされていて、どことなくフライドポテトにも似た感じ。
特にイーサーン地方ではよく食べられていて、地元のおばあちゃんに「体にいいよ、元気になるから」とすすめられました。

ちなみに蚕は、ビタミンや必須アミノ酸も豊富で、韓国や中国でも昔からポピュラーな栄養食なんだとか。
食べ物としての歴史も、意外と奥が深いんですよね。


ごめんなさい…「メンイーヌーン」だけは無理!

ここまでロッドゥアンもトワマイも食べてきた私ですが、どうしても無理だったのが「メンイーヌーン」。つまり、フンコロガシです。

黒くて丸くてツヤのあるボディ…。そのビジュアルだけでも強烈なのに、「これは糞を転がす虫だよ」と聞いた瞬間、完全にギブアップ。

一部地域ではスープにして食べられているらしいのですが、私は断固遠慮しました。

さすがに地元の人たちも「これは無理しなくていいよ」と言ってくれたので、安心して逃げました(笑)。


セブンイレブンで買える!?昆虫スナックの衝撃

ある日、バンコク市内のセブンイレブンに立ち寄ったときのこと。

ふとレジ横の棚を見てみると、見慣れないパッケージが並んでいる…よく見ると「昆虫スナック」でした!

素揚げされたイモムシ、コオロギ、オケラなど、バリエーションも豊富。
しかも、20〜30バーツ(約70〜100円)とお手頃価格。

せっかくなので、何種類か購入してみることに。


実食レビュー:意外とイケる?それとも…?

家に帰ってから、勇気を出して一つずつ試してみました。正直な感想はこんな感じです。

  • イモムシスナック:見た目はすごいけど、味は香ばしくてナッツ風。サクサクして意外と美味しい。
  • コオロギスナック:独特の匂いがあって私は苦手…。でも、ハーブ風味で好きな人もいるかも。
  • トワマイスナック:味は悪くないけど、噛んだ瞬間の“ぶちゅっ”とした食感にやられました…。
  • オケラスナック:サクサクして香ばしく、おつまみ感覚で好評!

ちなみに、家族や友人にも食べてもらったところ、「イモムシはいける!」「蚕は無理!」と、意見がはっきり分かれました。

やっぱり昆虫食は、味より食感と見た目の壁が大きいですね。


「冒険心のある人」へのお土産にピッタリ

この昆虫スナックたち、日本へのお土産にも持ち帰りました。

もちろん、誰にでも渡せるわけではありません。
相手の性格をよ〜く見極めて、面白がってくれそうな人にだけ(笑)。

意外と人気だったのはやっぱりイモムシスナックで、「もう1袋ないの?」と聞かれるほど。

一方、蚕スナックは一口でギブアップする人続出…。やはり食感の好き嫌いが大きいようです。


世界で広がる昆虫食の未来

実は今、昆虫食は世界中で注目されているんです。
その理由は、地球に優しくて、栄養価が高いから

昆虫は、少ないエサや水で育てられ、家畜と比べて温室効果ガスもほとんど出さない。環境負荷がとても小さいんです。

コオロギやミールワームなどは「スーパーフード」として欧米でも注目されていて、クッキーやパスタに練り込まれた商品も増えています。

日本でも、最近はスーパーで「コオロギせんべい」や「昆虫入りパン」を見かけるようになりました。
言われなければ気づかないくらい、自然に食べられる味に仕上がっていることが多いんですよ。


まとめ 〜昆虫食は“文化”だった〜

タイで昆虫料理に挑戦してみて、思ったことがあります。

それは――「昆虫食は奇抜でもゲテモノでもなく、その土地の“文化”」だということ。

確かに最初は怖かったし、見た目でひるむことも多かった。でも、地元の人たちはそれを自然に受け入れ、日常の一部として楽しんでいます。

栄養価が高く、環境負荷も少なく、しかも美味しい。私たちが偏見を持っていた“虫”は、未来の食材として世界から注目されているんです。

タイに行く予定がある方、あるいは昆虫食にちょっとでも興味がある方――ぜひ一歩踏み出してみてください。

最初のひとくちが、世界を変えるかもしれませんよ。